札幌市西区に本社を置く建設会社「花井組」で、社長が従業員に暴力をふるっていたことが明らかになりました。この様子は防犯カメラに記録されており、当事者の男性は「日常的に暴力があった」と証言しています。
事件の概要
暴行の一部始終が防犯カメラに記録
問題の映像は、今年3月、同社の社員寮で撮影されたもので、社長が社員の男性を殴る蹴るといった暴行を加える場面がはっきりと映っています。止めに入る社長の妻の声も記録されていましたが、暴行は止まることなく、男性は泣き叫びながらも暴力を受け続けていました。
男性の証言によれば、腹部への膝蹴りを皮切りに、顔面への殴打や平手打ちなどが繰り返され、その回数は20回以上にも上ったといいます。
「『ふざけんな、歯向かうのか』と怒鳴られながら、顔を何度も殴られました」
きっかけは「コイの世話」での一言
暴行のきっかけは、水槽の掃除に関するやり取りだったといいます。社内で飼育されていたコイの世話を命じられた男性が、社長の妻に言われたことに対し語気を荒げて返答したところ、それが社長の逆鱗に触れたとのこと。
この一件により、男性は左耳の聴力障害や関節の痛みなど、全治約3週間のけがを負いました。
「暴行の後、社長からは『俺も忘れるから、お前も忘れろ』と言われたんです」
常習的なパワハラ体質? 社内の“沈黙の空気”
男性によれば、社長の暴力は今回が初めてではなく、社内では“恐怖による支配”が蔓延していたとのこと。
「社長に逆らうと痛い目に遭う。常務ですら口を挟めない雰囲気でした」
事件発覚後、男性は会社を辞め、警察に被害届を提出。ところが、その後、社長の親族から脅迫とも取れる内容の留守電が残されていたといいます。
「『いい加減にしろ、さらいにいくぞ』というメッセージが残っていて、本当に怖かった」
SDGs認定企業の実態とスポンサー契約解除の波紋
花井組は、札幌市からSDGs認定企業としての認定を受けており、地域貢献や環境配慮を掲げる“模範企業”とされていました。また、プロバスケットボールチーム「レバンガ北海道」のサポート企業でもありましたが、8日には暴行映像が事実であることを確認したレバンガ側が、即座に契約解除を発表しています。
会社側はこの件に対して、「弁護士を通してください」とのみ回答し、事実関係への言及は避けています。
被害男性が訴える「企業としての在り方」
最後に、暴行を受けた男性はこう語ります。
「僕ひとりの問題ではなく、他の社員も黙らざるを得ない空気がある。会社として根本的に考え方を見直してほしい」
SDGsや地域支援を謳う企業で起きた今回の事件は、単なる社内トラブルでは済まされない大きな社会的問題を浮き彫りにしています。
取引先は沈黙 しかし内部関係者が証言「日常的だった」
今回の暴行事件を受けて、花井組の主要取引先にも取材が行われましたが、表立った反応は得られませんでした。
札幌市西区に拠点を置く取引先企業・A社は、直接の取材申し入れに対し「対応は控える」とコメント。さらに、東京都世田谷区池尻に本社を構えるN社も、書面での質問に対し「お答えは差し控えます」と回答するにとどまりました。
しかし、そのN社の関係者が匿名を条件に取材に応じ、次のように語りました。
「花井組だけじゃなく、この業界では珍しくない話。今回だけじゃないと思います」
この関係者によれば、防犯カメラの映像に映っていたのは「七戸社長である可能性が非常に高い」と見られており、過去にも似たようなトラブルの話を耳にしていたといいます。
また、「拳や足で直接暴行を加えるような行為は、どんな理由があっても許されるものではない」と強く非難する声もあり、業界内でも今回の件は看過できないと受け止められているようです。
企業倫理とコンプライアンスの観点から見る今回の問題
今回の一連の暴行事件が浮き彫りにしたのは、企業内部でのガバナンス機能の欠如です。社員寮という密室空間で、経営者自らが暴力をふるい、それが誰からも止められなかったという事実は、花井組という組織における「恐怖による統制」が常態化していた可能性を示唆しています。
一般的に、企業倫理やコンプライアンスとは「法令順守」だけではなく、「企業が社会から求められる行動基準を守ること」も含まれます。社員への暴力行為は明らかにそれに反し、いかなる理由があろうとも許されるものではありません。
さらに問題なのは、目撃者となった幹部や社長の家族ですら、暴力を止めることができなかったという構造的な無力さです。社内通報制度や第三者委員会など、組織としての自浄機能が働いていれば、ここまで事態が深刻化することはなかったはずです。
■SDGs認定企業としての信頼失墜と制度の課題
花井組は、札幌市から「SDGs(持続可能な開発目標)」への取り組み企業として認定を受けていたことでも注目を集めました。SDGsの理念には「人権の尊重」「働きがいのある職場環境の整備」などが明記されており、今回のような暴力行為は根本的に相反するものです。
札幌市が行う企業認定制度は、申請書類や一定のヒアリングに基づいて企業の取り組みを評価する仕組みですが、今回のように「表向きの活動」と「実態」が乖離しているケースでは、制度の信頼性そのものが揺らぎかねません。
今回の問題を受けて、市や関係機関が制度の見直しに踏み出す可能性もあります。たとえば、
- 定期的な実地調査の導入
- 社員からの匿名アンケートを制度に組み込む
- 暴力・ハラスメント発覚時の即時認定取り消しルール
など、より実態に即した基準へのアップデートが求められる局面に入っているといえるでしょう。
■社会全体で問われる「見て見ぬふり」の責任
本件では、暴行を黙認していた幹部や同僚たちの存在も問題視されています。パワハラや暴力が見過ごされる環境では、長期的に見て人材の流出や企業イメージの毀損は避けられません。
今後、企業として信頼を取り戻すためには、トップの交代や外部機関による調査、そして透明性のある情報開示が不可欠です。暴力の現場に身を置かざるを得なかった従業員たちの声を、社会がどう受け止めるのか。これは一企業の問題にとどまらず、現代の労働環境と社会構造に問いを投げかける出来事です。
Xまとめ
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